この一冊は、どんな漫画か
空の「堅実のつづら」を開けた関谷が、目を渦巻かせ、引きつった顔で崩れる。ここまで余裕だった男が、たった一コマで壊れた。
関谷はずっと自信満々だった。読みも計算も間違っていないと、本人が思っている。その驕りと、あとから湧いてくる焦りを、真経津は正面から潰さずに使う。関谷が自分で選んだつもりの手が、一つずつずれていく。そして空の「堅実のつづら」。目が渦を巻き、引きつった顔で「バカ…バカァッ!!!」と崩れる。
その直後に「弱った人には理由が必要なんだ」という一言が置かれる。ここで、負けたのは運ではなく心理だったと腑に落ちた。敗因が言葉で回収されるから、関谷の判断がどこで曲がったのかを遡って確かめたくなる。
主人公の御手洗にも同じことが起きている。卓越した計算力を持ちながら、銀行勤めの日々に疲れて、数字だけが刺激になっていた男。それが命知らずのギャンブラーたちに触れて、心が動き始める。
ゲームの勝ち負けと同じくらい、彼の人生がどこに向かうのかが気になった。
毎回ゲームが変わるのは面白い反面、倍率や勝利条件、攻略の仕組みを把握するのに手間がかかる。ここを追えるかどうかで、面白さの見え方はかなり変わると思う。1巻は関谷戦の決着後、次の「気分屋ルーシー」が最終ラウンドに入り、最後の読み合いが始まったところで終わる。関谷戦だけでも心理戦として足りているのに、そこで切られる。
こよいの一言
素直に褒めない編集長。眼鏡を外したときだけ本気。
渦を巻いた目で崩れる、あの顔。運の勝負を見ているつもりだったのが、一コマで読み違えていたと分かった。
選・文今宵の一冊 編集長 こよい
この一冊、誰かに教える
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