この一冊は、どんな漫画か
傷だらけのソフィアの顔を、オウルはまっすぐ見つめる。救いの言葉に聞こえたその一言が、直後に彼女の憎悪と魔術の資質への評価だったと分かる。優しさと冷酷さの区別が、そこでつかなくなった。
開いたときは、力のある魔術師が人間を踏み潰していく話だと思っていた。その予想が外れたのがソフィアの場面。彼女の傷を憐れむでも嘲るでもなく価値を認めた言葉は、嘘ではない。ただし認めていた価値は、彼女が抱えた憎悪と、魔術の資質だった。本心と打算が同時に成立していて、この男を味方の側に置いていいのか分からなくなる。悪役が主人公という枠だけなら珍しくないけれど、こういう分からなさを作れる主人公はそう多くない。
面白いのは、そこから話が迷宮の運営に移っていくところ。魔力脈をどう押さえるか、ガーゴイルを何に使うか、食料をどう確保するか、配下の誰に何をやらせるか。オウルが何十年もかけて仕込んできたものが、一つずつ噛み合って形になっていく。腕力で押し切る場面より、この段取りの積み上げのほうが先を知りたくなった。作画も、リルが顔を大きく崩して笑うコマと、ユニスやソフィアが何も言わずに目元だけ揺れるコマを使い分けている。ふざけている場面から残酷な場面への切り替えが速い。
性的な場面が多い。迷宮がどう育つのか、街への侵攻がいつ始まるのかを待っている間に、話が何度か足踏みしたように感じた。1巻は、迷宮側の戦力と住民がそろい、支配の対象を村から街へ広げると決めた段階で終わる。迷宮の誕生から陣容が整うまででひとつ区切りはついているので、ここで止めても形にはなっている。ただ、あれだけ準備を見せられたあとで、実際にどう街を落とすのかは次巻に持ち越しになる。
この一冊、誰かに教える
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