この一冊は、どんな漫画か
雪の国境河を渡り切って、ディネルースは力尽きる。その体をオークの王グスタフが大きな腕で抱き上げ、「汝とその仲間は 我が民 我が同胞だ」と告げる。
この台詞は、助けてやる、でも、保護する、でもない。お前たちはもう私の民だ、という宣言として置かれている。民族浄化を逃れて何もかも失った側に、失った誇りのほうは一度も触らずに、居場所だけを渡す。ディネルースがこのあと軍人として立ち上がっていけるのは、ここで折られなかったからだと分かる。倒れた者を抱き上げる大きな腕と、その腕の持ち主がやがて隣国を焼くという題名が、同じ1巻の中に並んでいる。この置き方が良かった。
オルクセンの強さは、軍の場面だけでできていない。逃れてきた者への救護があり、食事があり、そこから農業、鉄道、軍制へと話が伸びていく。国が動く手順が順番に見えるので、戦争ができる国だと説明される前に、人が暮らしている国だと伝わってくる。強さの根拠が生活の側にある物語は面白い。
作画は、整った美しさではなく味のあるほうの線で、重い時代の空気とよく合っている。絵柄が合えば、そこから一気に入っていける。誇りを背負って動く人物が何人も出てきて、そのそれぞれに引き受けているものがあるのも良い。第1話はやや助走で、国と軍の話が本格的に動き出すまで少し待つことになるが、待った先が広い。無料分は、新設部隊の実力を測る大規模演習が一区切りつき、対エルフィンド戦の輪郭がはっきりしたところで終わる。ここまで来ると、この王とこの国がどこで線を越えるのかを見届けたくなる。題名が最初から答えを言っているのに、途中がまったく想像できない。
この一冊、誰かに教える
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