この一冊は、どんな漫画か
加茂教授が三咲に「カモられてるのは、あなたのご両親」と告げる。遠い誰かの詐欺事件だったはずが、一言で身近な家族の問題に変わり、読む手が止まった。
最初に戸惑ったのは、人物の表情と線の硬さだった。
読み始めは「選ぶ作品を失敗したかも」と思ったほど、画面から感情を読み取りづらい。けれど、加茂教授が相手の思惑を見抜き、淡々と事実を突きつけていくほど、その無機質なタッチが教授の不気味さと、扱われる題材の冷たさに馴染んでいった。
描かれるのは、詐欺師が使う仕組みだけではない。焦っているときに都合のいい話を信じてしまうことや、自分だけは大丈夫だと思い込むことまで、騙される側の心理を順に見せていく。
焦りや思い込みが判断を狭めていく過程、つまり人がカモられる側に回るときの心理まで書いてある。だから事件の行方を追いながら、自分ならどこで間違えるかを同時に考えることになる。騙されないための勉強になる、と書くと硬いが、実際にそういう読み方ができる。
事件の結末を追いながら、自分や家族ならどこで判断を誤るかまで考えさせられる。逆転劇の痛快さと、現実で身を守るための知識が同じ話の中にある。
制度を説明する台詞が続く場面は講義を読んでいる感覚が強く、序盤の作画と合わせて入りづらさはある。ただ、一連の不正受給を巡る話にはきちんと区切りがつくため、1巻だけでも満足感は残る。
そこから名簿売買や制度の悪用へ問題が広がり、最後には加茂教授が挑む次の相手まで示される。ひとつの事件を解いた安心より、この教授はどこまで大きな搾取に手を伸ばすのかが気になった。
この一冊、誰かに教える
作品名とひとこと、リンクが入った状態で開きます。そのまま投稿しても、書き足しても。


