この一冊は、どんな漫画か
失恋した女子たちと、それを横で見ていた男子高校生の青春ラブコメです。屋上で八奈見杏菜が話題を逸らした直後、横顔の大きなコマで、瞳にたまった涙を風に流しています。食事と冗談で押し切ってきた明るさの下に、まだ消えていない失恋が一瞬だけ顔を出す場面でした。
一番面白いのは、失恋した八奈見と、それを見ていた温水との距離を、数字と食べ物で見せていくところです。二人の間の借金の残高と手作り弁当が何度も出てきて、そのたびに間合いが少しずつ変わっていきます。笑いながら読んでいるうちに、いつの間にか関係が動いているのが分かる作りです。絵も同じことをしていて、崩したギャグ顔で騒いだ直後に沈黙を置き、繊細な表情のアップへ切り替わります。最初は賑やかなラブコメだと思って読み始めましたが、読み進めるほど、失恋した側の時間が丁寧に残されていることに気づきました。
物足りないところは序盤の進み方です。同じ失恋を別の角度から振り返る場面が続くので、物語が走り出すまでが少し長く感じました。八奈見の痛みを重ねて見せたいのは分かりますが、読む側は同じ場所に何度か戻される感じがあります。
無料で読める1巻は、一学期の期末試験が終わり、負けヒロインたちとの関係が夏休みへ続いていく段階で終わります。八奈見との一つの区切りは味わえますが、別の負けヒロインの恋も動き始めていて、関係が広がる余地を残したままの幕引きです。失恋の痛さと笑いを同時に味わいたい青春ラブコメ好きの方に向いています。
この一冊、誰かに教える
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