この一冊は、どんな漫画か
43歳独身男性の記憶を持ったまま、ダークエルフの女性として生き直す異世界冒険譚。この手の作品でありがちな無双の万能感ではなく、本作がまず見せるのは「人を傷つけることへの生々しい恐怖」です。絡んできた相手を魔法で吹き飛ばした直後、主人公ハルカが青ざめて「この人達、殺してないですよね?」と確かめる。まずこの場面に、この主人公が持つ大人の真っ当な感覚が出ています。
「外見が美女で中身はおじさん」という設定を、くだらない下ネタや安易なギャグに逃がさず使っている点には好感が持てます。描かれているのは、若い連中の輪に入っていくときに感じる、30代や40代なら覚えのある独特の気後れや距離感です。見た目は派手でも装備は実用性優先、力を使うときも常にブレーキを踏んでいる。その慎重さが表情やモノローグで一貫して描かれているため、主人公の佇まいに嘘がありません。
ただ、構成として少しもどかしいのは「自分はおじさんだから」と遠慮する独白が、序盤に何度も繰り返される点です。言いたいことは分かりますが、同じ理由で立ち止まる描写が続くと、せっかく進み始めた話が足踏みしているように見えてしまいます。
第1巻は、ようやくできた仲間たちと想定外の強敵に向き合う場面で終わります。続きを読ませる引きとしては手堅い作りです。派手な俺TUEEE系ではなく、分別のある大人が少しずつ他人と打ち解けていくような、落ち着いた読み味を求めているなら手に取る価値があります。
この一冊、誰かに教える
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