この一冊は、どんな漫画か
スーパーの裏で煙草を吸うだけの、中年会社員と店員の短い時間を描いた漫画です。体調の不安が晴れた佐々木が、安心した顔で「俺まだ……田山さんと吸ってていいんだな」とこぼします。それを聞いた田山の片目が、大きく見開かれます。
この漫画がうまいのは、二人の距離が近づいた瞬間に、そのまま留まらないところです。煙の流れる間や、言葉の途切れた沈黙、目元だけを大きく映したコマで、静かに距離を詰めていきます。そしてその直後に、崩した表情のコマを置いて笑いへ戻す。しんみりした空気を長く持たせないので、読んでいるこちらも身構えずに次の話へ進めます。田山がからかい、佐々木が律儀に返す。そのやりとりの間に、相手を気遣う小さな仕草が少しずつ往復していくのも、読んでいて気持ちのいいところでした。
物足りなかったのは、胸元や腋を使ったネタです。静かな会話の場面がこれだけ丁寧に積まれているだけに、そこだけ別の漫画から来たように感じました。笑いへ戻すための緩急という点では同じ役割なのだと思いますが、表情や間で笑わせる場面のほうが、この作品らしさが出ています。
無料で読める1巻は、体調を巡るすれ違いを経て、二人が店の裏で過ごす時間をこれからも続けると確かめる段階で区切られます。短編の積み重ねなので1巻だけでも満足感はありますが、佐々木は山田と田山の正体に気づかないままです。派手な恋愛より、仕事帰りの短い会話と大人の距離感を味わいたい方に向いています。
この一冊、誰かに教える
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