この一冊は、どんな漫画か
寺島と過ごした後で、恋人の武史が楓の身体を見て「お前さぁ 最近太ったよな」と言う。同じ女を前にして、片方は言わないことを、もう片方は口に出す。
武史の一言には悪意がない。思ったことをそのまま言っただけの顔で言っている。その直前まで楓は、こちらの様子を見て話す速度を変えるような男と一緒にいた。同じ身体を、片方は品定めして言葉にし、もう片方は何も言わない。楓が寺島に傾いていく理由を、説明される前に納得してしまった。
パパ活を題材にした漫画は、たいてい遠い世界の出来事として描かれる。これはそうならない。結婚を控えたOLが、将来のための隠し貯金をどう作るかを考えるところから始まって、地続きで足を踏み入れていく。誰も悪人として立っていない。武史は無神経だけれど、楓を裏切っているわけではない。寺島は金を出しているけれど、楓を雑に扱わない。そして楓は、その両方を分かったうえで動いている。だから読んでいる側も善悪の判定を下せない。この落ち着かなさを1巻のうちに作れているのが良かった。
1巻は、楓が最初の相手との出会いを経て、結婚前のこの時間をもう少し楽しんでもいいのではないかと考え始めるところで切れる。何かが壊れたわけではない。むしろ、うまくいっているように見える段階で終わる。それが一番いやな終わり方だと思った。
この一冊、誰かに教える
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