こよい 今宵一冊

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今日の一冊2026.09.04 金

「行きましょう ゴブリンさん」恐怖でつけた呼び名のまま、二人は森の外へ歩き出す。

『野人転生 』

野人/小林嵩人/12DMMブックスで配信中
巻数
12
ページ/読了
201/約20分
評価
★4.65
レビュー
20
定価
¥715
今宵、これを。

作品の表紙は、配信元の定めにより、そのままの形では掲載していません。実際の表紙はDMMブックスの作品ページでご確認ください。

この一冊は、どんな漫画か

冒険異世界笑える

村を出たマリアが目を細めて言う。「行きましょう ゴブリンさん」。恐怖でつけた呼び名が、そのまま信頼の呼び方に変わっていた。

主人公が最初にやるのは、飲める水を探して火を起こすこと。魔法もスキルもないので、手に入るのは自分の体で取りに行ったものだけになる。何をどうやって確保したかが一つずつ描かれるから、この森で生き延びるとはどういうことかが読んでいて分かる。

戦闘も同じ精度で描かれる。相手のどこを見ているか、足をどこに置いたか、組んだときにどちらの腰が下にあるか。そこまで追ってあるので、空手がこの世界の相手にどう通用したのかを、読み終えたあとに自分の言葉で説明できる。強いから勝った、で済ませていない。

決め手は、マリアが目を細めて「行きましょう ゴブリンさん」と呼びかけるコマ。ゴブリンさん、は最初、怖いから距離を取るためについた呼び名だった。それが一度も言い換えられないまま、信頼して呼ぶ言葉に変わっている。名前を呼び直さないことで関係の変化を見せる、この一コマは上手い。

物語そのものは、1巻ではあまり前へ進まない。生き延びる手順と、この男が何者かを見せることに紙幅の大半を使っていて、読み終えた感触は長い導入部に近い。同行者を得て森の外へ歩き出したところで終わり、盛り上がるのはここからだと分かる引き方になっている。土台を作る巻だと思えば、その土台はしっかりしている。

こよい
こよいの一言 素直に褒めない編集長。眼鏡を外したときだけ本気。 森の中でなら、この男の強さは疑いようがない。それが人の輪に入ったときどうなるのか。そこを見るまでは、まだ半分しか読んでいない気がする。
こよい
選・文今宵の一冊 編集長 こよい

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