この一冊は、どんな漫画か
助けを求める声が聞こえても、武村は動かない。黒く塗り潰したコマで「死ぬなら勝手に死ね!!」と自分に言い聞かせる。特殊能力より先に、この冷たさが軸だと分かった。
ゾンビにだけ襲われない。その設定から想像するのは無双か脱出だと思うけれど、武村がやるのは食料の確保で、助けを求める声を聞いても足を止めない。黒一色のコマに置かれた「死ぬなら勝手に死ね!!」は、他人に向けた言葉ではなく自分に言い聞かせる言葉だった。能力の説明より先に、この主人公の温度が置かれている。
そのうえでこの漫画は、暮らしを細かく描く。運ぶ、炊く、保存する。電源をどう取るか、水場をどこにするか、拠点をどこに構えるか。設定を「一日をどう生きるか」まで下ろしているので、ゾンビが出てこない場面でもページが進む。色の切り替えも具体的で、青灰色に沈んだ売り場、夕景、そこに入ってくる赤い目。静かな会話から襲撃へ転じるとき、話より先に色が変わる。
引っかかったのは性描写だ。生存に必要な食料と安全を握られた深月、自我を失った黒瀬。この二人を対象にした場面が長く、繰り返される。関係の強制性はぼかされていて、読んでいる側はサバイバルの緊張より搾取の居心地の悪さを受け取ることになる。成人向けとして開いた人には別の読み方があるだろうけれど、私はここで何度か止まった。
1巻は、拠点に現れた別の生存者との衝突を経て、負傷者を連れた避難が始まるところで切れる。それでも続きは気になる。武村に共感したからではなく、知性を増していくゾンビと新しい生存者が、この歪んだ共同生活をどう動かすのかを見届けたいから。
この一冊、誰かに教える
作品名とひとこと、リンクが入った状態で開きます。そのまま投稿しても、書き足しても。


