この一冊は、どんな漫画か
ヤクザ8人を叩きのめしたあと、慎太郎はたった今の戦いを一人で思い返していく。誰も見ていないところで起きる、とても静かな場面。
ヤクザ8人。倒しきったあとの慎太郎は、勝った勢いのまま次へ行かない。あの動きは訓練でやった、あの判断もできた、と一つずつ確かめていく。部屋で一人で積み上げてきたものが、この夜に全部つながる。自分には強さがある、才能もあるらしい。それを静かに認めるところまでが、この場面。
面白いのは、その力を何のために鍛えてきたかという話。39歳、低学歴、低収入。その責任は国にあると決めて、復讐のために訓練を続けてきた男。なのに最初にその力を使ったのは、隣の家に放置された子どもを守るためだった。国を恨んで積み上げた時間が、国と何の関係もない場所で返ってくる。慎太郎を目覚めさせたのは復讐心ではなく、隣の部屋の子どもたち。
覚醒したから最強、という話にはならない。才能に気づいた直後に本物のプロが出てきて、圧倒される。ヤクザ8人で得たものが、そのまま持ち上がっていかない。あと、慎太郎は正義の人ではない。動機は復讐のままで、読んでいて気持ちよく応援できる相手ではない。そこを承知で読む人向け。
1巻はそこから、追手との戦いに入る手前で切れる。目覚めた力をどこへ向けるのか、本物のプロにどう立ち向かうのか。ここで止めるのは難しい。
この一冊、誰かに教える
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