この一冊は、どんな漫画か
自分よりはるかに大柄な男からマウントを奪い、血まみれの相手を笑顔で見下ろす。「“暴力”を叩き込んで上げます」と拳を構える六道の、その笑顔で手が止まった。
女性が男性の力に屈する。漫画で何百回も見た構図が、この1巻では最初から反転している。六道は体格差でも人数差でも引かない。大柄な男の下から抜け出してマウントを奪い返し、血まみれになった相手を上から見下ろす。そこまでなら痛快なだけで終わる。手が止まったのはそのコマの顔だった。笑っている。
「暴力は男女平等です」。この台詞が、六道を正義のヒロインの側に置かせない。弱い立場の誰かを守るために振るっているのなら、こちらも安心して応援できる。でも彼女が言っているのは、性別を理由に手加減しないという宣言でしかない。痛快さの裏に、この子は何のためにやっているんだろうという居心地の悪さが残る。それが笑顔でセットになっているから、余計に気になる。
1巻は、喧嘩を避けてきた主人公が自分から暴力の世界へ踏み出す入口で終わる。合理主義の優等生が、いちばん合理的でない場所へ足を入れる。六道の強さについては、この1巻で十分すぎるほど見せてもらった。分からないままなのは動機のほうで、なぜ暴力でなければいけないのか、あの笑顔の奥に何があるのかは、まだ一度も開かれていない。強さの底が見えているのに人物の底が見えていない、この配分で1巻を終えられると続きを開くしかなくなる。
この一冊、誰かに教える
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