この一冊は、どんな漫画か
雷で停電した部屋、暗がりの中に大きなコマが一つ。ずっと拒む側にいたはずの彼の顔がそこにある。押されて流されたのではなく、自分の意志で越えたのだと分かる場面。
大人の関係だけを見せる漫画だろうと思って開いた。ストーリーには期待していなかった。それが変わったのが、雷で停電した部屋の場面。タケルが「僕も…吉岡さんが好きでした…」と返す。それまで彼は押され続けている側に見えていて、こちらも流されているだけだと思って読んでいた。あの一言で、彼が自分の意志で境界を越えたことが分かる。被害者の顔をしていた側が、実は選んでいた。
一度過ちを犯したあと、罪悪感があっても関係は切れない。繰り返すうちに、それが日常の一部へ変わっていく。その過程の運び方が、想像していたより物語として面白かった。吉岡の圧力と、何も知らないカオリの笑顔やメッセージが交互に置かれる。そこに目元だけのアップや、誰も喋らないコマが挟まる。台詞で説明しないまま、息苦しさだけが濃くなっていく。
中盤までは、拒む・押されるのやり取りが似た形で続く。身体を強調した構図が先に立つ場面では、吉岡が何を考えているのか、タケルがどこで迷っているのかが見えにくくなる。心理のほうを追って読んでいると、そこは足踏みに感じた。
無料の1巻は第18話まで。二人の関係の意味が変わって、もう後戻りできないと分かる段階で本編が終わる。おまけ漫画、巻末イラスト、次巻案内、奥付まで収録。区切りとしては悪くないけど、満足はしない。一度きりの過ちが日常になり始めたところで止まるから、三人がどう崩れていくのかを確かめたくなる。
この一冊、誰かに教える
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