この一冊は、どんな漫画か
モーテルの椅子で、チャーリーは表情ひとつ変えずに聞く。「思ってたよりずっと深刻さや緊張度が高いんじゃないかって……どう思う?」襲われた側の心の中を、当人より先に言い当てていた。
危険はもう過ぎている。それでも恐怖を感じている間は、襲撃の被害が心の中で現在形のまま続いている——その重さを、チャーリーが先に言葉にする。悪意はない。ただ知りたくて聞いている。人間の想像力は、本人が終わったと思ったあとも被害を延長し続けるほど強くて、そのぶん残酷でもある。それを、人間ではないほうが表情も変えずに指摘してくる。読む速度が落ちた。
上手いのはその直後だ。マックスはチャーリーの洞察を受け止めて、そのまま家族やルーシーへの危害の話へつなぎ、彼を誘導していく。相手を正確に理解していることと、その理解を悪用することが、同じ人物の同じ台詞の中に並んでいる。誰も殴らないし走らない。椅子に座った会話だけで、緊張が跳ね上がる。
1巻は、襲撃者との接触が思わぬ事件へ発展して、チャーリー自身が追い詰められる局面で終わる。人間と動物の境界という問いが、観念のまま置かれずに、彼の立場をひっくり返す出来事へ接続していく。倫理を考えさせる漫画は他にもあるが、それを事件の駆動力にしてサスペンスとして走らせているものは多くない。ここは言い切る。面白い。全巻まとめて読みたくなるのが分かる終わり方だった。
この一冊、誰かに教える
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